2017年8月25日金曜日

から揚げの科学 その2

次にから揚げの衣について見ていきましょう。

衣についても、竜田揚げ風の片栗粉ベース、小麦粉ベース、粉そのまま、水溶き、中華風の卵入りなど、色々とあり、それぞれに特徴があります。片栗粉はほぼデンプンなので、カリっと揚がってより早く黒くなりますが、小麦粉はタンパク質も含まれるので、衣はいい色づきになりにくく白っぽいです。さらに、小麦粉は捏ねたり高い温度帯だとグルテンが増えるのでサクサクとはならず、固い衣になりやすくもあります。小麦粉と片栗粉の混合も1つの手でしょう。粒子の大きさが違うデンプンがまざると、デンプンの連結が阻害されてサクッとなりやすいですし、デンプン以外の小さな粒子、例えばパウダースパイスなんかをまぜると、さらにサックリします。

これは好みに応じて配合を色々変えるといいかと思います。

わたしの理想の衣は、竜田揚げっぽいカリカリなのに、花が咲いてサクサクというものです。それを実現するには今のところベーキングパウダーで衣を散らさないと無理なんですけどね。

最後に肉の仕込みですが、わたしの所では24時間ブライニングし、そのあとはオイルで真空パックして氷温冷蔵で熟成しています。

肉を柔らかくするのに色々試しました。タンパク質を分解させるために、パパイヤやキウイに漬けたり、マイタケに漬けたり、ミオラを使ったり、ジャガード入れたりと、まあアレコレやりました。

タンパク質を分解する方法は確かに柔らかくなるのですが、グズグズに溶かす方向で柔らかくしますので食感が悪くなります。

やはり、現段階でベストなのはブライニングすることで肉の内部に塩を入れ、塩の力で肉の繊維をほぐす方法ですね。塩水が肉に入るのでジューシーさも補完されますし、肉の弾力も保てます。ただ、ブライン液につけすぎるとドリップの流出が多くなってしまいますので、24時間漬け込んだ後はジップロックに入れてオイルを注いで空気を抜いて氷温で保存するのがベストです。

肉がオイルに覆われることで、浸透圧の関係からドリップが流出することなく肉汁が中にとどまります。さらに、氷温で保存することで、細菌の繁殖を阻止し、なおかつ肉が熟成して旨味も増し、保存期間もグーンと伸びるという、まさにいいこと尽くし。

たぶん、から揚げでこんな仕込みしてるのはわたしの所ぐらいかも知れませんね。
味付け以外の部分での工夫こそ、簡単に真似のできない部分だと思います。



から揚げの科学 その1

よく、当店のから揚げは美味しいとおっしゃっていただけます。ただ、気まぐれというかもっと他にはない感じにしたいとか、もっと改良したいと思って、最近までコロコロ頻繁に変えていたこともありました。

これ、出すの嫌だなぁってこともあったのですが、今は比較的安定しております。

さて、みなさんはどんなから揚げが好きでしょうか?

わたしが評価するポイントは以下の3点です。
1.肉質(柔らかさやジューシーさ)
2.衣(サクサクorカリカリorふわふわなど)
3.味付け

恐らく、3の味付けを重視する人が多いかと思いますが、わたしの場合、色々なお店に行って食べたときに見るのは1の肉質や2の衣がメインで味付けはあまり気にしていません。

言い換えると、味付けなんて生姜、にんにく、塩、醤油、その他で何とでもなる、つまり誰でも何とでもできる部分なので、プロの技としては評価が控えめになるですよね。

で、やはりプロとして顕著にレベルが表れるのは1と2の部分ではないでしょうか?

まず、肉質。これは、揚げ方にも影響しますし、仕込み方でも左右されます。肉はやはり、旨味が詰まった肉汁を多く残す方が技術的には高いでしょう。理想的には外側の衣と皮の部分はカリッと揚がり、身の部分は弾力がありながらも柔らかくてジューシーな感じでしょうか。

では、どうすれば理想の肉質にできるのでしょうか?
まずは、火の入れ方から見ていきましょう。

肉の火入れで考えると、高温でメイラード反応を起こして香りを出すことも重要ですが、低温でタンパク質のミオシンだけ変性させて、水分を多量に含むアクチンは変性させない温度がベストです。

低温調理の場合、鶏のもも肉だと54度で3時間、58度だと1時間20分がわたしの実験では最適な肉質の状態でした。これが、コラーゲンが多い骨付き肉やたんぱくな胸肉やささみなどの場合、温度帯や加熱時間が全然違ってくるので注意が必要です。

では、から揚げだとどうでしょうか?
わたしも何度かは、低温調理して最適に火が入った鶏肉に衣をまぶし、高温で衣に一気に火を通し、内部には火を通さない方法を使ったりしました。

ただこれ、店で出すには大きな欠点があって、低温調理しすぎると肉に火が入りすぎますので、ほどよい状態でから揚げにする必要があります。しかし、低温調理完了の丁度いいタイミングでから揚げの注文が入る訳もなく、どうしても冷蔵保存することになります。そうすると、冷蔵でせっかくの肉質が縮んでしまうんですね。

なので、やはり生の肉を注文の時点で2度揚げすることで、内部温度をコントロールしてアクチンの変性を抑えた揚げ具合にするのが今のところベストだと感じています。

から揚げの大きさによるのですが、ストップウォッチを使った実験の結果、当店の2度揚げのベストはこんな感じです。

1.180度で1分40秒揚げる 皮目を上にして触らない
2.3分40秒休ませる この間に余熱で中に火が入る
3.180度で50秒揚げる
4.1分休ませる そうしないと熱々でやけどすること間違いなし

これで、必要以上に火を入れず、肉汁を保ち、中まで火を入れることができます。
では、その2に続きます。



2017年8月22日火曜日

エンジニアのカレー学 その3 スタータースパイスの謎

スタータースパイスとは、カレーづくりの最初の工程で、クミン、またはカルダモンやクローブ、マスタードシードなど1種類または複数のホールスパイスを油に入れて加熱する作業に使われるスパイスです。

では、このスタータースパイスの作業の目的はなんでしょうか?
何処をどう調べても、こう書いてあります。

「油にスパイスの香りを移すのが目的。」

はい、きましたコレ。ここで、いっつもひっかかるんです。まさに、学校の授業で、みんなが分かったと言って先に進むのに一人取り残される感覚。
油に香りを移すのが目的?
では、油に香りを移すのは何が目的?

これに回答している話は、どこをどう探しても見つかりません。

きっと、疑問に思っている人もいるはず。
いや、もしかすると、多くの人は、油に香りが移る=カレーの香りを形作るという理解なのかもしれません。わたしは、こういうのが、だめなんです。色んな可能性がある以上、1つの推測を確定させて、理解を補うことができないんです。メカニズムがきちっと把握できないと理解した気にならないので、そこから進めないんです。

さて、では本気でこれを解明していきましょう。

まず、油に移った香りが調理中にどう変化するのか考えてみます。

1.たまねぎ、にんにく、しょうがなどと炒めることで、それらに香りが移る。同時に、香気成分はスパイスからどんどん抜けていき、空気中に揮発するものも多いと思われる。

2.トマトを加えて水分を飛ばす。油に保持された香気成分は水分との界面上で揮発がより進むので、1の工程よりは揮発が進むはず。(検証のためパウダースパイスの投入は無視)

3.水分を加えて煮込む。どっぷり水分なので、2の工程よりも揮発は進むはず。理論上はこの工程でレトロネーザルアロマがかなり香り、部屋はカレーの匂いで充満するはず。

4.完成。さっと食べれば香り高いうちに食べられるかも。しかし、時間と温度でどんどん香りは失われていきますね。いくつかの論文によると、1~2時間で香りの大部分が失われるという説も。

恐らく、インドのようにさっと作ってさっと食べるのなら、香りの損失も気にならないのでしょう。しかし、店でカレーを出すとなったら、そういう訳にはいかず、すべての工程で香りの損失が積み重なります。なので、当たり前ですが、時間とともにスタータースパイスの香りが弱くなるということですね。

というか、そもそもスタータースパイスの油はいわば香味油ですよね。同じ香味油である鶏油も香りが特徴のゴマ油やEXVオリーブオイルも、加熱によって香気成分がなくなるんだから、つかうのは最後って相場が決まってるじゃないですか。

じゃあ、なぜスタータースパイスだけ最初なのか?恐らく、にんにく、しょうが、玉ねぎ炒めるのに油を使うからなのかな。ここで油を使って、最後にスターターオイル油をかけるとなると、油が多くなるから、最初に集約してるのか。まてよ、南インドだと油を最後に入れるぞ。これはアレか?インド人細カイコトキニシナイっていうアレなのか?

とまあ、こんな感じなんですが、誰か明確に回答できる方がいれば教えてください!
わたし個人の仮説としては、スターターオイルもガラムマサラ同様に最後に使う方がいいと考えています。そのために、色々と工程の見直しをしなくちゃいけないんですけどね。

例えばこんな感じ。
1.にんにく、しょうが、玉ねぎ、トマトはそれぞれ油を使わずに水分を飛ばす。
2.ベーススープをつくる。水と塩だけの人はそれで。
3.スタータースパイスをテンパリングする。
4.3と1を合わせ、パウダースパイスを絡めて弱火で香りを引き出す。
5.4と2を合わせて、マサラを振りかけて完成。

どうですか?
これだとスパイス関連の工程が最後に集約されているので、香りの損失は最小限で済みますよね。香りが弱くてお困りの方は、ぜひ一度試してみてください。



料理とエンジニアの関係

科学的に料理にアプローチする分子ガストロノミーについて聞いたことがある人も多いかと思います。エスプーマで食材を泡にしたり、オリーブオイルをイクラのように球状にしたりするアレです。
エルブジのフェラン・アドリアやイギリスのヘストン・ブルメンタールが有名ですね。日本でも大分浸透していて、関西だと菊乃井の村田さん達がリードする関西食文化研究会ってところで勉強会などが開催されています。

この分子ガストロノミー、元エンジニアの私にはピッタリと肌にあってるんですね。今の店舗では、チョコレートウォーマーを低温調理器としてフル活用してますし、エスプーマなんかも、日本でまだ亜酸化窒素が認可されていない時期に、海外から取り寄せて実験したりもしてました。まあ、大抵は実験で満足して中々アウトプットに至らないんですが。

そういえば、元マイクロソフトのCTOつまりNo2のネイサン・マイヤーボールドも科学的なとてつもない料理本を出してますが、技術者が料理にアプローチするとどうなるのかがすごく分かるんですね。勝手に同じカテゴリの人だとシンパシーを感じたり。もちろん、レベルは天と地の差ですが・・・

わたしは、エンジニアの本懐はものづくりだと思っていて、料理はまさにものづくりであり、そこでエンジニアの能力が大いに役立つと確信しています。

例えばトヨタでは車をつくるのに、大野耐一さんが音頭をとって、乾いたぞうきんをさらに絞るといわれるほど、改善を積み重ね、ジャストインタイムという時代をリードしたトヨタ生産方式を確立しました。

このように、ものづくりは、改善や生産革新の歴史です。10日で10万円かけて1つの商品ができたとします。それが、次の段階では、生産工程や部品、調達先の見直しなど色んな知恵を絞って3日で3万円で1つの商品をつくるということを繰り返してきました。

また、日本では昔から職人などの世界で守破離という概念があります。

第一段階 守:肉じゃがを教えられたレシピ通りに忠実に作る。
第二段階 破:教えられた肉じゃがをベースに、具材や調理工程を改善し、より早く簡単に美味しい料理を作る。
第三段階 離:今までの知識や経験をもとに、まったく新しい肉じゃがを作る。または、肉じゃがから進化した新しい料理を作る。

こう考えると、守の段階の人は圧倒的に多く、料理研究家の人たちは破の段階でお手軽レシピを考案し、一流シェフの人たちは離の段階で、新たな価値を生むことを目指し、日々料理をつくっています。

で、わたしは昔から守を疎かにして、すぐ破や離に向かうと怒られたりしました。今ならその通りだと思うのですが、当時のわたしにはあまり分かってなかったですね。てか、守の重要性を認識している今ですら、やっぱり苦手ですね。根っからの破や離のタイプなんでしょうか。

話は分子ガストロノミーに戻りますが、料理の再構築って言葉聞いたことありますか?

つまり、肉じゃがならそれを要素分解し、香りも食感も味もまさに肉じゃがなのに、見た目は高級フレンチ料理のような優雅さに仕上げるとか、そんなことをやるんです。もっと知りたい人はこちらをどうぞ。

例えばカレーづくり。
守のカレー屋さんはインドやスリランカの製法を尊重する、いわば原理主義的な料理で、わたしも大好きです。彼らは現地に行っては研鑽を積み、日本に持ち帰って提供してくれています。真似したいなと思うのですが、守が苦手なわたしには向いてないのかも知れません。

で、わたしが得意なのは、カレーの製法の抜本的見なおしなど。スターターっているの?テンパリングって最適解は?などなど、インドやスリランカの古代から受け継がれるレシピや日本式欧風カレーのレシピにかなり喧嘩を売ったりしています。負けたときは、ああ、やっぱり先人の知恵は偉大なんだなと思ったり、勝った時は、ほら見ろ、これはすごい発見だぞ、とひとりほくそ笑んだり。そんな繰り返しで料理しています。

そんなカレーの再構築についての考察は別途お話したいと思いますので、今回はこの辺で。




2017年8月21日月曜日

エンジニアのカレー学 その2 カレーの香りの感じ方

S&Bのサイトで興味深い実験の話が読めます。
野菜と肉でつくった煮汁を2つのコップに入れて、1つはそのまま、もう1つは、コップの縁にカレーを塗って香りがするようにし、何人かの人に飲み比べてもらった結果・・・

飲んだものは同じなのに、カレーの香りがするだけで、多くの人が美味しく感じたという結果でした。

ともかく、料理に風味はとっても重要だってことですね。
そこで、今回はカレーを食べる時の香りの感じ方をお話しします。

まず、湯気とともに立ち昇り、食欲をそそる匂い。これを料理や日本酒の世界では立ち香といい、学術的にはレトロネーザルアロマと言います。

次に、口に含んだときに、口中から鼻に抜けていく匂い。これはあと香とか含み香とか口中香、学術的にはオルソネーザルアロマと言います。

実はわたし、特にこのオルソネーザルアロマを大事に考えています。カレーの場合、オルソネーザルアロマにも段階があるようで、最初に感じるのがパクチーやカスリメティなどのフレッシュなハーブ類の香りとふりかけたマサラの香り、そして神出鬼没なホールスパイスをガリっとした時の香り、最後に余韻としてスープに溶け込んだクローブなどの深い香り。これで、わたしなどは、ああ美味いなぁと感じてしまうんです。

このオルソネーザルアロマ。感じさせるのが本当に難しい。特に食べる前にレトロネーザ
ルアロマをたっぷり嗅いでしまうと、食べた時にアレッ?となりがち。

なので、食べる前に既にスパイス臭に慣れてきた鼻にオルソネーザルアロマを感じてもらうには、レトロネーザルアロマでは感じられない何かを加えるのもひとつの方法でしょう。それが、食べる直前に振りかけるマサラであったり、粒のまま残っているホールスパイスだったり、上にぶっかけたパクチーやカスリメティだったりするんでしょうね。

あとは温度も大事ですね。ぬるい温度だと、オルソネーザルアロマは弱いままです。揮発量が少ないですからね。

また、時間が経てば経つほど香りが弱くなっていくので、つくったらすぐに食べたいものです。

みなさんもカレーを食べる時は、ぜひオルソネーザルアロマを意識してみてください。鼻に抜ける香りが鮮烈であればあるほど、美味しさも倍増すること間違いなしですよ。


エンジニアのカレー学 その1 香りの正体

カレーづくりにおいて、あなたは何を一番重視してますか?

コクや旨味という人もいるでしょうし、まろやかさとか辛さという人もいるでしょう。
わたしの場合はスパイスが如何に鮮烈に香るか?という点を最も重要なファクターとして考えています。

ドカベンで神奈川を制する者が全国を制するなんてありましたが、カレーの世界では香り制する者がカレーを制すといってもいいぐらいです。

スパイスの香りって難しいんですよね。温度や時間の経過でどんどん揮発していくので、いざ食べる段になると、アレ?香りが弱い?ということも。体調によっても感じ方が変化するし、香りを嗅ぎすぎると、いざ食べる時には鼻が麻痺して臭いしなくなるし・・・

そもそも、香りってなんでしょう?

まず、学術的に言えば香りとは「芳香化合物」とか「香気成分」と言われていて、その大抵が水素や炭素、酸素といった原子で構成されているのです。

この香気成分が料理から揮発して空気中を漂い、鼻の嗅覚受容体にたどり着いて匂いを感じるという訳です。

では、カレーの主要なスパイスのひとつであるクミンを例に香気成分をもっと具体的に見てみましょう。クミンをクミンたらしめている香気成分はクミンアルデヒドといい、化学式はC10H12O。クミンに似ている事で有名なワキガの臭いのスパイシー臭成分がC7H14O3。あれ?違いますね。まあ、クミンにも香気成分は100種以上ようですし、ワキガの匂いも同様でしょうから、複数の香気成分が混合された結果、似たような香りに感じるのかも知れませんね。

話はそれましたが、クローブならオイゲノール、カルダモンならテルピネオールやシネオールなどがカレーにとって、特に重要な香気成分となっています。そうして、これらの香気成分がひとまとまりになってカレー独特の香りと感じる訳ですね。

ところで日本では昔から、各種スパイスを混ぜ合わせてしばらく寝かせることで、バラバラだったスパイスの香りが、まとまってひとつのカレーという香りになるという考え方が主流でした。ところが、昨今ムーブメントを起こしている大阪スパイスカレーでは、あえてスパイス個々の香りを感じさせるという逆の考え方があって、それぞれが主張しあう賑やかな感じが大阪らしいなと思います。

またまた余談でしたね。
さて、この香気成分を純粋に抽出したものが、アロマテラピーなどで使われるエッセンシャルオイルとなります。エッセンシャルオイルはご存知のように揮発性で基本的に無色で油上の液体です。すぐに揮発するので、ふたを閉めて冷暗所の保管しますよね。実は引火性もあって危険物扱いされるものもあるんです。

オイルと名がつくので、油と誤解する人も多いようですが、油じゃないんですね。揮発性の高い液状の物質とでもいった感じでしょうか。でも、油じゃないと言っても、香気成分は油によーく溶けるんです。脂溶性が高いんですね。じゃあ水に溶けないのか?と言われると、厳密には溶けないのではなく、溶けにくいという話なんですね。なお、油によく溶けるのは香りと辛味。ペペロンチーノオイルなんてまさにその代表で、にんにくの香りと唐辛子の辛味が油に溶け込んでますよね。ここで、よくある誤解がひとつ。このアヒージョは旨味が油に溶け込んで美味しい!ってあるじゃないですか?

実は、旨味は油に溶けません。旨味が溶けるのは水です。専門的に言えば、水は+-の電気的な偏りを持っています。つまり磁石のように極性があるんですね。で、塩や砂糖、グルタミン酸やイノシン酸といった旨味成分は同じように極性があるから、磁石のように水とは結び付くんです。でも、油には極性がない。極性がないものは極性がないもの同士で馴染むんです。なので、例外もありますが基本的に、塩や砂糖、旨味は水に溶け、香りや辛味は油に溶けるという事になります。ペペロンチーノの場合、香りと辛味が溶けたオイルと塩気や旨味が溶けた水分がまざりあうことで、美味しいソースになるという訳です。

おっと、また余談でしたね。
なんとなく香りの正体が見えてきましたか?


美味しいスープは2極化する?

最近、ラーメン屋さんに行って感じることがあるんです。とても美味しいのに、人によっては物足りないと言う人もいるんだなということに。これ、欧風カレーしか知らない人が、南インドのサラっとしたカレーを食べて物足りない、つまり、期待していたコクや旨味がないと感じるのと同じ話なんですね。 ...