2017年8月25日金曜日

から揚げの科学 その1

よく、当店のから揚げは美味しいとおっしゃっていただけます。ただ、気まぐれというかもっと他にはない感じにしたいとか、もっと改良したいと思って、最近までコロコロ頻繁に変えていたこともありました。

これ、出すの嫌だなぁってこともあったのですが、今は比較的安定しております。

さて、みなさんはどんなから揚げが好きでしょうか?

わたしが評価するポイントは以下の3点です。
1.肉質(柔らかさやジューシーさ)
2.衣(サクサクorカリカリorふわふわなど)
3.味付け

恐らく、3の味付けを重視する人が多いかと思いますが、わたしの場合、色々なお店に行って食べたときに見るのは1の肉質や2の衣がメインで味付けはあまり気にしていません。

言い換えると、味付けなんて生姜、にんにく、塩、醤油、その他で何とでもなる、つまり誰でも何とでもできる部分なので、プロの技としては評価が控えめになるですよね。

で、やはりプロとして顕著にレベルが表れるのは1と2の部分ではないでしょうか?

まず、肉質。これは、揚げ方にも影響しますし、仕込み方でも左右されます。肉はやはり、旨味が詰まった肉汁を多く残す方が技術的には高いでしょう。理想的には外側の衣と皮の部分はカリッと揚がり、身の部分は弾力がありながらも柔らかくてジューシーな感じでしょうか。

では、どうすれば理想の肉質にできるのでしょうか?
まずは、火の入れ方から見ていきましょう。

肉の火入れで考えると、高温でメイラード反応を起こして香りを出すことも重要ですが、低温でタンパク質のミオシンだけ変性させて、水分を多量に含むアクチンは変性させない温度がベストです。

低温調理の場合、鶏のもも肉だと54度で3時間、58度だと1時間20分がわたしの実験では最適な肉質の状態でした。これが、コラーゲンが多い骨付き肉やたんぱくな胸肉やささみなどの場合、温度帯や加熱時間が全然違ってくるので注意が必要です。

では、から揚げだとどうでしょうか?
わたしも何度かは、低温調理して最適に火が入った鶏肉に衣をまぶし、高温で衣に一気に火を通し、内部には火を通さない方法を使ったりしました。

ただこれ、店で出すには大きな欠点があって、低温調理しすぎると肉に火が入りすぎますので、ほどよい状態でから揚げにする必要があります。しかし、低温調理完了の丁度いいタイミングでから揚げの注文が入る訳もなく、どうしても冷蔵保存することになります。そうすると、冷蔵でせっかくの肉質が縮んでしまうんですね。

なので、やはり生の肉を注文の時点で2度揚げすることで、内部温度をコントロールしてアクチンの変性を抑えた揚げ具合にするのが今のところベストだと感じています。

から揚げの大きさによるのですが、ストップウォッチを使った実験の結果、当店の2度揚げのベストはこんな感じです。

1.180度で1分40秒揚げる 皮目を上にして触らない
2.3分40秒休ませる この間に余熱で中に火が入る
3.180度で50秒揚げる
4.1分休ませる そうしないと熱々でやけどすること間違いなし

これで、必要以上に火を入れず、肉汁を保ち、中まで火を入れることができます。
では、その2に続きます。



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