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2017年8月22日火曜日

エンジニアのカレー学 その3 スタータースパイスの謎

スタータースパイスとは、カレーづくりの最初の工程で、クミン、またはカルダモンやクローブ、マスタードシードなど1種類または複数のホールスパイスを油に入れて加熱する作業に使われるスパイスです。

では、このスタータースパイスの作業の目的はなんでしょうか?
何処をどう調べても、こう書いてあります。

「油にスパイスの香りを移すのが目的。」

はい、きましたコレ。ここで、いっつもひっかかるんです。まさに、学校の授業で、みんなが分かったと言って先に進むのに一人取り残される感覚。
油に香りを移すのが目的?
では、油に香りを移すのは何が目的?

これに回答している話は、どこをどう探しても見つかりません。

きっと、疑問に思っている人もいるはず。
いや、もしかすると、多くの人は、油に香りが移る=カレーの香りを形作るという理解なのかもしれません。わたしは、こういうのが、だめなんです。色んな可能性がある以上、1つの推測を確定させて、理解を補うことができないんです。メカニズムがきちっと把握できないと理解した気にならないので、そこから進めないんです。

さて、では本気でこれを解明していきましょう。

まず、油に移った香りが調理中にどう変化するのか考えてみます。

1.たまねぎ、にんにく、しょうがなどと炒めることで、それらに香りが移る。同時に、香気成分はスパイスからどんどん抜けていき、空気中に揮発するものも多いと思われる。

2.トマトを加えて水分を飛ばす。油に保持された香気成分は水分との界面上で揮発がより進むので、1の工程よりは揮発が進むはず。(検証のためパウダースパイスの投入は無視)

3.水分を加えて煮込む。どっぷり水分なので、2の工程よりも揮発は進むはず。理論上はこの工程でレトロネーザルアロマがかなり香り、部屋はカレーの匂いで充満するはず。

4.完成。さっと食べれば香り高いうちに食べられるかも。しかし、時間と温度でどんどん香りは失われていきますね。いくつかの論文によると、1~2時間で香りの大部分が失われるという説も。

恐らく、インドのようにさっと作ってさっと食べるのなら、香りの損失も気にならないのでしょう。しかし、店でカレーを出すとなったら、そういう訳にはいかず、すべての工程で香りの損失が積み重なります。なので、当たり前ですが、時間とともにスタータースパイスの香りが弱くなるということですね。

というか、そもそもスタータースパイスの油はいわば香味油ですよね。同じ香味油である鶏油も香りが特徴のゴマ油やEXVオリーブオイルも、加熱によって香気成分がなくなるんだから、つかうのは最後って相場が決まってるじゃないですか。

じゃあ、なぜスタータースパイスだけ最初なのか?恐らく、にんにく、しょうが、玉ねぎ炒めるのに油を使うからなのかな。ここで油を使って、最後にスターターオイル油をかけるとなると、油が多くなるから、最初に集約してるのか。まてよ、南インドだと油を最後に入れるぞ。これはアレか?インド人細カイコトキニシナイっていうアレなのか?

とまあ、こんな感じなんですが、誰か明確に回答できる方がいれば教えてください!
わたし個人の仮説としては、スターターオイルもガラムマサラ同様に最後に使う方がいいと考えています。そのために、色々と工程の見直しをしなくちゃいけないんですけどね。

例えばこんな感じ。
1.にんにく、しょうが、玉ねぎ、トマトはそれぞれ油を使わずに水分を飛ばす。
2.ベーススープをつくる。水と塩だけの人はそれで。
3.スタータースパイスをテンパリングする。
4.3と1を合わせ、パウダースパイスを絡めて弱火で香りを引き出す。
5.4と2を合わせて、マサラを振りかけて完成。

どうですか?
これだとスパイス関連の工程が最後に集約されているので、香りの損失は最小限で済みますよね。香りが弱くてお困りの方は、ぜひ一度試してみてください。



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