2020年2月10日月曜日

インド料理とスパイスカレーの幸せな関係

 某地方の某有名インド料理店さんが、料理経験が少ない人でも間借りでカレーをやることに対して、素人が間借りで寿司屋をやろうなんて思わないよねというようなツイートで揶揄されてました。それを見て、ああ、この人はもしかして自分の店の料理の正体を分かってないのかなと思ったり…

 寿司は職人さんがつくる外食料理。対して現地式のインド料理はお母さんがつくる家庭料理。大元から全然違います。

 うちの息子に家でつくる味噌汁と近所の美味しいラーメン屋さん、どっちが美味しい?と聞いたことがあります。息子は少し考えてラーメン屋さんと回答。そりゃあ旨味を重ねて美味しく仕上げた料理なんだから、美味しいのは当たり前。そこで、また息子に、じゃあ毎日食べたいのはどっち?と聞くと、今度は味噌汁という回答。

 つまりそういうことなんですよね。美味しいの種類が違うんです。例えばミールス。滋味深く毎日食べたいと思う味です。しかし、ちゃんとしたインド料理に慣れない人が食べると、なんだがイメージと違うという人もいるかと思います。また、家でスパイスからチキンカレーを初めてつくった人も、あれ?なんだか思ってた味と違うぞ?と思った人もいる事でしょう。

 それもそのはずで、なんだか違うぞと思った人の先入観の正体は旨味を重ねた欧風カレーや、日本人にアジャストした北インドネパール系のナンで食べるカレーなんですから。
欧風カレーや日本人アジャスト系インネパはどちらかというとラーメン系の美味しいけど普通は毎日食べるとしんどい食べ物。一方、家庭的な現地系インド料理は毎日食べれる滋味深い家庭料理。カテゴリが違いますからね。もちろん一概には言えませんが、基本的にはこんな考え方でOKだと思います。

 なので、ミールスなど現地系のインド料理は、下手に出汁とかで旨味を重ねたり色んな工夫をすると段々毎日食べたくなる滋味深い料理から離れてしまいます。素材の味をシンプルに塩とスパイスで引き出すだけで十分美味しいんです。

 そして、スパイスカレー。インド料理の手法を取り入れながらも日本人向けに色々な方法で旨味をアジャストしてきました。黎明期の頃は欧風カレーしか食べたことのない人でも美味しく感じれるよう、旨味の濃いスパイスカレーが多かったように思います。しかし時とともに、大阪ではほぼ現地式のインド料理をスパイスカレー風に一皿で表現されたものや、サラサラと軽い出汁系が人気を博するようになってきましたね。

 また、現地式スパイスカレー風を食べるようになった人たちは、現地系のインド料理も美味しい美味しいと積極的に食べはりますし、家でも積極的にスパイスからカレーをつくられています。そして、美味しくできたから、店でもやってみんなに食べて欲しいと思うのはごく自然なことだと思います。もちろん、各種責任が発生しますが、大阪で間借りをやってる方々はその辺の責任に対してとてもしっかりされている印象です。

 そして、寿司やフレンチとは違い、家庭料理の滋味深さが神髄なので、料理への敷居が低いのが南アジア料理の魅力の一つだと思っています。外食の旨味溢れるラーメンと家庭料理の滋味深い味噌汁、欧風カレーや旨味押しのスパイスカレーと現地系の滋味深いカレー。それぞれ美味しさのジャンルが違うものですが、影響を受け合っているいい関係ですし、私の知る限り多くの大阪の食べ手の方は両方の違いをちゃんと分かっていてどちらも美味しいと堪能されてますね。今度、スパイスカレーを食べる時は、このカレーはどっち寄りなんだろうと考えながら食べるとより深い美味しさが分かるかも知れませんよ。

美味しいスープは2極化する?

最近、ラーメン屋さんに行って感じることがあるんです。とても美味しいのに、人によっては物足りないと言う人もいるんだなということに。これ、欧風カレーしか知らない人が、南インドのサラっとしたカレーを食べて物足りない、つまり、期待していたコクや旨味がないと感じるのと同じ話なんですね。 ...